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素因減額

      2016/12/20

事故前に被害者に何らかの傷害・身体的特徴があり,交通事故によってそれが損害の発生・拡大に寄与した場合,賠償すべき金額を決定するにあたり,上記身体的特徴等を考慮することができるかどうかが問題となります。

これについては有名な最高裁の判例があります。

最高裁平成8年10月29日判決

「首長判決」と呼ばれる裁判例です。人の平均的な体格に比して首が長く多少の頚椎の不安定症があるという被害者の身体的特徴(素因)に事故が加わって、バレ・リュー症候群等を発症した事案です。

最高裁は、「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しないかぎり、被害者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することはできないと解すべきである。」として、素因減額を否定しました。

争点は疾患にあたるかどうかという判断になります

詳細は,民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(2009年下巻)において鈴木祐治裁判官が分析されています。

頸椎後縦靱帯骨化症,椎間板ヘルニア,脊柱管狭窄,骨粗鬆症等について検討されています。

なお,不法行為における過失相殺は任意的なものにすぎないから,仮に「疾患」に該当する場合であっても,損害の公平な分担という損害賠償法の基本法理から減額しない余地もあります。そうした下級審裁判例もあります。

以 上

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