家事従事者の基礎収入
主婦として家事労働をしている者については,家事労働には対価性があるため休業損害・逸失利益が認められます。
「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」(判例タイムズ1014号(2000年1月1日号)参照)によれば,次のように考えられています。
(1)専業主婦の場合,原則として全年齢平均賃金による。特段の事情があれば適宜減額する。
(2)兼業主婦の場合,実収入額が全年齢平均賃金を上回っている場合は実収入額によるが,下回っているときは(1)に従って処理する。
参照ページ:逸失利益の計算(中間利息控除)
http://goto-law2013.com/closed_damage_or_los/closed_damage_or_los-207/
最高裁の判例もあります。
*最高裁判決昭和50年7月8日
家事従事者にも休業損害は認められる。
損害額は,原則として賃金センサスの女子平均賃金により算定する。
家事労働に従事することが財産上の利益を挙げていると評価されるのは,家族のために行う労働である場合です。自分の身の回りのことを行うことは該当しません。
よって,独身の女性,一人暮らしの女性の場合には,家事労働に関する休業損害等は認められません。
男子の家事従事者についても同様に休業損害等認められますが,男子ではなく女子労働者の賃金センサスを基準として基礎収入を算定します。
高齢主婦の場合には,賃金センサスの平均賃金から減額される裁判例が多くあります。
*詳細は赤い本(2003年版)において,鈴木順子裁判官が「家事労働の逸失利益性」のタイトルで執筆されております。
以 上