自賠責基準と訴訟提起②
2017/05/05
交通事故被害者が,自賠責保険会社に訴訟提起する場合に注意するポイントがあります。
*過失割合
自賠責では過失相殺は原則行われません。ただし重過失減額の場合は別です。
しかし,訴訟になると,普通に過失相殺されます。
(平成24年10月11日最高裁判決)
「法16条1項に基づいて被害者が保険会社に対して損害賠償額の支払を請求する訴訟において,裁判所は,法16条の3第1項が規定する支払基準によることなく損害賠償額を算定して支払を命じることができるというべきである(最高裁平成17年(受)第1628号同18年3月30日第一小法廷判決・民集60巻3号1242頁)。そして,法15条所定の保険金の支払を請求する訴訟においても,上記の理は異なるものではないから,裁判所は,上記支払基準によることなく,自ら相当と認定判断した損害額及び過失割合に従って保険金の額を算定して支払を命じなければならないと解するのが相当である。」
よって,被害者の過失が大きい事案において,訴訟提起は被害者に不利になる場合があります。
*負担部分
自賠責保険会社に対する被害者の直接請求権と被害者の加害者に対する損害賠償請求権は別個独立の請求権であり,両者の関係は
不真正連帯債務の関係に立つと解されています。
上記両債務の内部関係について,負担部分については過失割合で定まるといわれています。
それでは,上記両債務の過失割合はどうやって決まるのか?
仮に自賠責保険会社が被害者に訴訟提起されて支払った場合,加害者に求償するのか?
という問題が発生します。
*免除の効力
加害者から損害賠償の一部を受領して,その余は免除し,その後自賠責保険会社に訴訟提起する場合に,免除の絶対効の問題が発生します。
加害者と示談するときは,文言に注意が必要です。
(平成10年9月10日最高裁判決)
「甲と乙が共同の不法行為により丙に損害を加えたが,甲と丙との間で成立した訴訟上の和解により,甲が丙の請求額の一部につき和解金を支払うとともに,丙が甲に対し残債務を免除した場合において,丙が同訴訟上の和解に際し乙の残債務をも免除する意思を有していると認められるときは,
乙の残債務に対しても免除の効力が及ぶ。」
以 上