年金の生活費控除割合
2016/12/20
逸失利益の計算において,被害者の方は事故後も生活し,生活費も費消されていきます。
例外は,被害者の方が死亡する場合です。
その場合,単純に
基礎収入×労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数×労働能力喪失率=逸失利益
と計算して加害者(保険会社)に請求するのは,
× 誤りです。
理由は,
死亡する場合は,死亡以後の生活費が不要になるからです。
そうした理由で,被害者死亡の逸失利益については,生活費を控除した金額のみ加害者に請求することができます。
それでは,
どの割合で逸失利益から生活費が控除されるのでしょうか?
一般的には,30~50%程度と言われています(赤い本参照)。
それでは例えば,年金受給者の場合の生活費控除割合はどうなるでしょうか?
この点
民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(いわゆる赤い本)
1996年(平成8年)号下巻「退職者・年金の生活費控除」において,渡邉和義裁判官が詳細に解説されています。
上記解説によれば,年金のみを受給していた場合の生活費控除率は
5~8割
とされております。
その理由は,年金受給者(高齢者)は一般に年金に頼って生活しており,年金を得ても,その多くを生活費に費やすからです。
しかし,その基準は裁判所において形式的に使用されるかというと,そうとは限りません。このあたりについては,裁判所も個別具体的に考慮しているようで,小職が担当した事案でも,生活費控除率3割という件がありました(年金収入が相当多かった事案)。
また,上記渡邉和義裁判官執筆の記事であげられている裁判例においても,控除率30%の事例が散見されます。
以 上