年金と逸失利益①
2017/05/05
年金受給者が交通事故によって死亡した場合,年金額が逸失利益として損害賠償の対象になるかが問題になります。
この点については,年金の種類によって逸失利益の対象になったり,ならなかったりします。
たとえば,
判例で認められるものに
〇 老齢基礎年金
〇 老齢厚生年金
〇 普通恩給
〇 公務員の退職年金給付認められないものとして
× 遺族厚生年金
× 軍人恩給の扶助料
それでは,裁判所は,何を基準に逸失利益の対象になるかならないかの判断をしているのかと言うと
(当該年金の性格が)受給者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするものであるとともに、受給者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても、同一の機能を営むものと認められる場合には,逸失利益の対象になり(最高裁判決平成5年9月21日,最高裁判決昭和41年4月7日参照),
当該年金が,専ら受給権者自身の生計の維持を目的とした給付という性格を有するものと認められる場合には,逸失利益の対象にならない。
という基準で判断する場合もあります(他の判断基準を用いる場合もあります)。
では,逸失利益の対象にならない年金を受け取っていた方が交通事故で死亡した場合,賠償額に何も影響しないのか,という話しになると,
生活費控除割合に影響してきます(前掲最高裁判決平成5年9月21日原審参照)。
以 上